米国のフォークシンガーであり、
環境問題や平和の活動家でもあった
ピート・シガーさんが亡くなった。
『花はどこに行った』は反戦歌だ。
野に咲く花はどこに行く?
野に咲く花は娘たちが摘んでいく。
野に咲く花を摘んだ娘たちは、どこに?
娘たちは、愛する青年のもとに。
青年たちは、どこに行く?
青年たちは、娘たちを遺して戦場に行く。
戦場に行った青年たちは、どこに行く?
戦場に行った青年たちは、GRAVEYARD、お墓に行った。
そうして、青年たちが入ったお墓に花が咲き、
お墓に咲いた花はどこに行く?
YOUNG GIRLS HAVE PICKED THEM EVERYONE
と、繰り返されて、戦争の悲惨さを歌った歌だ。
去年11月まで日々、東京新聞「この道」に連載していた原稿の最後に、
わたしは、彼がうたい広めた『天使のハンマー』について書いた。
ちょうど、彼のおつれあいが亡くなった時(彼女は日系人)で、
彼女もまた平和や環境についての活動をされていたかたである。
もしハンマーがあったら、それを振り回して、
世界中に平和を作りあげる……という歌だった。
今年米国に行く機会があったら、是非ニューヨーク市の彼を訪ね、
お話をうかがいたいと望んでいたのだが。
同じ今日の新聞に、中学と高校の学習指導要領解説書を
改訂する記事が掲載されていた。
国が大きく旋回するとき、まずは教育に手がつけられることは、
すでに歴史が何度となく証明している。
貸して失くしたか、しまい失くしたかはわからないが、
30年近く前に読んだ本に『母の大罪』というノンフィクションがあった。
ひとりで息子を育てていた母は、息子の「立身出世」を望んでいた。
それが自分の喜びであり、充実であり、夢でもあった。
そして第二次世界戦争。
息子は母の希望を自分のそれにして、兵隊になった。
戦場での「立身出世」の道が続く。
1945年8月。戦争が終わり、息子は巣鴨プリズンで戦犯として処刑される。
それを、彼の母は、『母の大罪』と呼んだのだ。
同じ時代が再び来ないように、と願いながら、そこまで来ている、と。
わたしも天使のハンマーが欲しい。