首都圏で暮す、ひとりの女性であり詩人であり、母である
ひとからメールが届いた。
幼い「わが子」を通して、すべての子どもが「安全であるところ」を
探し、もがき、活動する日々の中で、以下、彼女が紡いだことば
たちである。
もしも、私たちが渡り鳥ならーすべての母たちへ
裸の凛とした肢体で
私たちはただの母だ
裸の凛とした肢体で
私たちは君たちを産んだ
君たちが産まれて 分娩室で裸の私たちの胸にのせられたとき
君たちは懸命に生きようと乳を吸おうとした
何もないことがしあわせだった
私たちは裸でも生きていかれる
素足のまま 歩いてゆける
もしも私たちが渡り鳥なら
何も持たず
安全な食べ物のあるところを目指して
君たちを育てられるところを目指して
今すぐにでも跳び立てる
ただ母としてただの裸のいのちとして
今私はただの母に戻りたい
君を産んだあの日
素足で世界に降り立って
世界と和解した夜
何度でも君を産みたいと願ったあの夜 はだかの私
はだかの君
お金も家もしがらみも仕事も何もかも棄てて
もう一度君と生きることだけを考えて
君を連れてここから跳び立ちたい
そしてすべてがはじまる