会ったこともないのに、あのひとはどうされているだろう?
元気でいてください、と祈るように思うひとが、いる。
たとえば北海道泊原発の近くで暮らし、毎日、毎日、一日も休むことなく、
海水の温度を測っている男性がおられる。
もと保育士だったかただと記憶している。
原発は温暖化を促進する「海あたため装置」であり、
100万キロワットの原発一基ごとに一秒間に70トンの海水を取り入れ冷却し、
排水口から放射能や化学物質をともなって、海に放出される。
その結果、海水は7度から10度は上昇している。
その海水温度を彼は毎日計り、記録をとっているのだ。
それを紙芝居にして、請われれば、集まりに出かけていって上演していると知ったのは、
確か新聞の記事だった。(東京新聞「こちら特報部」だった記憶がある)
各地でこういった地道な活動をされているかたがたの声。
警鐘を鳴らし続けた専門家たちの声。
そうして「誰」かに「頑張ってください」と託すのではなく、
ほかでもない、ひとりひとりの「わたし」の声が、
柔らかくひとつになりますように、と思う夜。
8月20日。抱っこした生後二ヶ月の赤ちゃんの重みが、いまだ両腕にある。
この子たちは、なにひとつ選んではいないのだ。