本の間から栞がでてきた。
でてきた栞を手に、しばし言葉を失った。
栞の「謹呈」の活字の後に、記されているお名前は「綿貫礼子」さん。
自筆の文字にも鮮明な記憶がある。
20年以上も前にいただいたご本にも、この謹呈の栞があり、そこに記されていた文字と同じである。
特にファーストネームの「礼子」の「礼」の字に特徴があった……。
文字の記憶というのも、あるのだ。
綿貫さんは、今年の1月30日に亡くなられたことは出版社を通して存じ上げていた。
「朝の教室」への講師にもお願いしたいと願ってきたのだが……。
綿貫さんは「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークの代表として、
チェルノブイリの子どもたちの健康問題を調査研究をされてこられた。
女性ネットワーク事務局からお送りいただいた2冊の本。
1冊は、綿貫礼子さんの最後の書籍となってしまった
『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの……「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』(新評論)。
栞のサインは、「病床の最期の日々に彼女が心込めてしたためたものです」とある。
もう1冊は、チェルノブイリの事故直後に綿貫さんが編集された
『廃炉に向けて……女性にとって原発とは何か』(同じく新評論)
昨年、オンデマンド版で復活したもので、この本にかかわった女性たちの中には、
亡き青木やよひさんのお名前も。
綿貫さんも青木さんも、フェミニズムの活動や勉強会での大先輩だった。
病床での、結果的には最期の日々での栞へのサインに、綿貫さんは遺志を込められたのだろう、
どれほどのエネルギーを振り絞っての、サインであったか。
栞を大事なものだけを入れておく小箱にしまって……、
改めてしっかり、綿貫さんの想いを受け止めたい。
綿貫礼子さんとチェルノブイリ被害調査・救援女性ネットワークには、
『誕生前の死―小児ガンを追う女たちの目 (SAVE OUR PLANETシリーズ)』(藤原書店)もある。