松谷みよ子さんと司修さんがコンビを組んだ『まちんと』(偕成社)。
あの夏の日。向日葵を背にし、日に焼けた
肩と頬をみせて立っていた、女の子。
8月6日、何が起きるかは誰も知らない、広島の日々。
そして、その日、その瞬間。
そして、それに続く、たくさんの明日。
その中で、女の子がようやく口にしてくれたのは、小さなトマト。
「まちんと」と呟く女の子の声に、母親はトマトを探して彷徨する。
なにもかもが一変した街を、街とは呼べない街を。
しかし、ようやく探したトマトを手に母親が
戻ってきたとき………。女の子は………。
いま白い鳥となった女の子は、
「まちんと、まちんと」と鳴きながら、
空高く飛んでいるという。
高層ビルが建ち並ぶ、この都市の空を。
犬と散歩に出るひとがいる、あの住宅街を。
「まちんと まちんと」と鳴きながら。