「あきれた報道監視」という見出しで、
東京新聞11月20日(日)の社会面は、
経済産業省資源エネルギー庁の「メディア監視」事業の
実態を報道している。
のけぞるような「監視」の実態ではある。
原発に関する「誤った報道の是正」という名のもとに、
委託業者を通して、反原発報道を集めていた、という。
むろん、こういった情報収集とチェック体制は
ずっと以前からあったものだろうが。
委託業者からの報告書に添えられたコメントには
「いたずらに不安をあおる」とか、感情的とか
偏っている、といった言葉が並び、感情的で偏っているのは
どちらなのかと問いたいような、不穏な言葉が並んでいる。
「情報公開請求で開示された報告書には、感情的な言葉が並び、
反原発の動きに神経をとがらせる本音が見える」と記事は続くが、
東京新聞(中日新聞)の記事など、ほとんどがエネ庁に言わせれば、
「誤った報道」ということになるのだろう。
収集された情報の、批判の対象は記事だけではなく、
たとえば人気漫画の『美味しんぼ』などにも向けられているという。
『ビッグコミックスピリッツ』2009年12月7日号に掲載された回では、
青森六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場の問題点を論じる場面があるという。
「美味しんぼ」はわたしも愛読する漫画だが、
主人公の記者が「もし大事故が起こったら最悪の環境破壊です」と
語る場面などについて、
例によって「いたずらに不安をあおる」と非難しているそうだ。
東京新聞の取材に対して、原作者は、
「書いたことは不正確ではない。電力会社に不都合なだけだ。
報告書のコメントこそ不正確だ」と反論。
「国民の税金を使って、電力会社の秘密警察を務めている」
と小気味よく、批判している。
多額の費用(むろんわたしたちの税金)を使っての、このような「検閲」。
現在はチェックの対象が、ネットに移行し、
ブログなどが「監視」されているという。
こういった無駄遣いを「仕分け」すべきだが、
原発推進に傾く現行の政府には期待できないことか。
送られてきた『原発訴訟』(海渡雄一・著 岩波新書)を読み始める。
帯には、「建設・運転の差し止めから事故後の損害賠償まで」とある。
どれもが、わたしたちの日常に関する「原発訴訟」である。