2011年4月20日水曜日

4月20日

クレヨンハウスが毎年主催する「夏の学校」に参加されたひとりの
小学校の教師から、原子力発電所の安全性を子どもたちに伝える、
「副読本」の存在を教えていただいたのは、去年のことだったか。
原発がいかに安全で、大事なものかを伝えるこの副読本の発行元は、
文科省と経済産業省資源エネルギー庁だ。原発が政・官・業・学・
メディアの一部をも含めた安全神話を垂れ流したことを考えると、
副読本の背景も見えてくる。
この副読本、2009年に初めて発行されたもので、文部科学省は、
教職員セミナーや施設の見学会などの事業に、11年度予算として
5億円近くを計上しているそうだが、副読本もその一部である。
しかし、わたしにこの副読本の存在を教えてくれた教師が言っていたように、
内容は原発推進をテーマとしたものであり、
その危険性についてはほとんど触れていない。
先日の東京新聞朝刊では、その内容について詳しく報道している。
記事によると、小学生向けが「わくわく原子力ランド」、中学生向けが
「チャレンジャー原子力ワールド」という、いまになっては嘔吐を
催すようなタイトルだ。チェルノブイリの原発事故などは紹介されている。が、
「いざという場合にも周囲への影響をふせぐしくみが
安全に守られているのじゃ」。
副読本にロボット共に登場する「博士」なる人物に言わせるなど、
言うまでもなく原発の安全神話を子どもを通して、
さらに再生産、補強するような内容である。
福島第一原発の暴走を受けて、高木文部科学相は4月15日に、
「事実と反した記載」として見直しを表明したというが、
教育委員会や小中学に配られたこの副読本を読んだ子どもたちは、
原発の安全性を信じるしかなかったに違いない。
第二次世界大戦中、教科書に載ったひとつの逸話、
立派な兵隊サンになることを母によって推奨される「水兵の母」と、
きわめて相似した、国ぐるみのキャンペーンではないか。
今回の東京新聞の記事ではじめて知ったことがほかにもある。
この副読本の冊数である。
小学生向けに3万部、中学生向けに1万部(2009年)刊行されたという。
しかし、全国のすべての子どもの手にわたるには、少なすぎる冊数であり、
彼らなら、もっと刷れたはずだし、配布できたはずだ。なぜ少ないのだろう。
原発のある地域や、これから原発そのものや原発の関連施設が
できる建設予定地を、主に想定して配られていたのではないか………。
わたしの勘ぐりでしかないのだが、もう少し調べてみよう。