2011年4月25日月曜日

4月25日

『さむがりやのサンタ』や『サンタのなつやすみ』、『ゆきだるま』などで
日本でも多くの読者を獲得している、イギリスの絵本作家、
レイモンド・ブリッグズの絵本に『風が吹くとき』(あすなろ書房・刊、さくまゆみこ・訳)という作品がある。

1982年にイギリスで出版された作品で、主人公は、年金で郊外でつつましく暮らすジムとヒルダという名の老夫婦。
漫画のコマ割りの手法を使って、核戦争の脅威という、このうえなくシリアスなテーマを描いた作品で、出版当初から大きな評判を呼んだ絵本だった。

いつも通りの、昨日に続く今日、明日の、はずだった。
町から帰ったジムはヒルダと食事をとりながら、ラジオから流れるニュースを聴いている。
「本日午後、首相が声明を発表(中略)死の灰を避けるシェルターを、3日のうちに…」

ジムとヒルダは、第二次世界大戦の体験者だ。
ニュースに驚愕しながらも、ふたりは当時の思い出話に花を咲かせる。
ヒルダの家の庭には、緑色のペンキで塗った防空シェルターがあり、その屋根の上ではキンレンカが咲いていたこと。隣家はシェルターの上でキャベツを育てていたこと。
「…灯火管制…警報解除…お茶を飲んでいるとまた空襲警報…学童疎開…」
思い出話は尽きない。話をしながら、当局の指示通りに、せっせとシェルターを作る。

ラジオが叫ぶ。
「敵のミサイルが わが国に向けて発射されました あと3分少々です」
「避難してください」、「外に出ないでください」「伏せてください」
衝撃。爆発音。閃光。熱風。

そうして…。当局の発表と指示通りにシェルターを作り、避難したジムとヒルダ……。

訳者は、帯に次のようなことばを寄せている。
…レイモンド・ブリッグズがこの絵本で描こうとした状況は、表向きの形は変わっても、今でも存在しているのです、「表向きの形は変わっても」、核の脅威は存在する。そして、放射能の脅威もまた。

わたしたちの、まさに、「いま」の中に。